2026年8月
計画は2つの部分でできています
衛生管理計画という名前は大きく聞こえますが、中身は2つだけです。ひとつは一般衛生管理で、どの店にも共通する8項目。もうひとつは重要管理で、自分の店のメニューを3つに分け、それぞれの確認方法を決めるところです。
紙にすれば1枚から2枚に収まります。分量を増やしても評価は上がりません。見られるのは、書いたとおりに実施できているか、そして実施したことが残っているかです。
業種や規模によって参照する手引書が変わります。ここでは公益社団法人日本食品衛生協会「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」令和6年1月改訂を前提にしています。
一般衛生管理の8項目
手引書の並びのまま、次の8つです。順番も名前も変えないほうが、後で確認するときに早く済みます。
- 1原材料の受入の確認
- 2冷蔵・冷凍庫の温度の確認
- 3交差汚染・二次汚染の防止
- 4器具等の洗浄・消毒・殺菌
- 5トイレの洗浄・消毒
- 6従業員の健康管理・衛生的作業着の着用
- 7衛生的な手洗いの実施
- 8温度計の点検
1項目につき書くことは4つだけです。誰が担当するか、何を確認するか、いつ行うか、問題があったときにどうするか。この4つが埋まっていれば、その項目は完成しています。
そのまま写して使える下書き
1項目めを例にすると、こう書きます。自分の店の仕入先名と設備名に置き換えれば、そのまま使えます。
1 原材料の受入の確認
- 担当
- 食品衛生責任者(不在時は店長)
- 確認すること
- 温度(冷蔵10℃以下、冷凍-15℃以下)、包装の破れ、期限、外観とにおい、納品書との一致
- いつ
- 納品のたび、受け取る前
- 問題があったとき
- 受け取りを断り、何が違ったかを記録し、仕入先に連絡する
2 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
- 担当
- 開店準備の担当者
- 確認すること
- 庫内の温度計を読み、記録する。冷蔵は10℃以下、冷凍は-15℃以下
- いつ
- 毎日、開店前
- 問題があったとき
- 食品を動く設備に移し、状態を確認し、読んだ温度と行った対応を記録し、修理を手配する
残りの6項目も同じ形です。トイレは「便座、レバー、手すり、ドアノブ、蛇口」まで書いておくと、誰がやっても同じ結果になります。温度計の点検は、砕いた氷と水に1分ほど静置して0℃(±1℃)を示すことを確認する、と書きます。
メニューを3つに分ける
重要管理はここからです。全メニューを次の3つに分けます。
- 第1群 非加熱のもの。冷奴、刺身、サラダ、漬物、デザートなど
- 第2群 加熱してすぐ提供するもの。焼き魚、唐揚げ、炒め物、汁物など
- 第3群 加熱後に冷却する、または再加熱するもの。カレー、スープ、煮物、ポテトサラダ、低温調理の鶏肉など
迷ったときは、一番手間のかかる工程で決めます。作って冷まして翌日に出すなら、加熱していても第3群です。第3群が一番多く確認することがあるのは、工程が多いぶん、うまくいかない場所も多いからです。
全品を1品ずつ書き出す必要はありません。同じ作り方のものはまとめて構いません。「揚げ物(唐揚げ、フライ、天ぷら)」で1行です。
それぞれの確認方法
分類が終われば、確認方法は決まります。数字は手引書のものです。
- 第1群:提供するまで10℃以下。冷蔵設備の記録と、出したままになっていないかを確認する
- 第2群:中心部が75℃で1分間以上。または63℃に達してから30分間。鶏の卵を使う料理は70℃で1分間以上。温かいまま提供するなら65℃以上で保管する
- 第3群:加熱し、2時間以内に20℃以下まで冷却し、10℃以下で保管し、温め直すならもう一度75℃で1分間以上
危険温度帯は10℃から60℃です。第3群でいちばん気をつけるのは冷却で、大きな鍋のまま置くと、この温度帯に何時間もとどまります。浅い容器に小分けし、氷水に浸け、ときどきかき混ぜます。
見た目や色では判断しません。中心温度計を最も厚い部分に挿し、表示が落ち着くまで待ちます。使うたび、特に生のものと加熱後のものの間では洗浄・消毒します。
記録は何を、どのくらい残すか
様式は自由です。決められた用紙はありません。計画に「いつ」と書いたとおりに実施し、実施したことが分かるように残せていれば足ります。
保存期間は1年間程度(12か月)が目安です。飲食店では、この期間に賞味期限と提供期間がすべて収まります。
毎日すべてを測る必要はありません。毎日と書いた項目は毎日、毎週と書いた項目は毎週です。実際にできる頻度で書き、書いたとおりに続けるほうが、立派な計画を守れないよりはるかに良い状態です。
月に一度の振り返り
計画は作って終わりではありません。定期的に見直します。4つの問いに答えれば十分です。
- 1確認は実施し、記録しましたか
- 2問題は起きましたか。どのように対応しましたか
- 3従業員は代わりましたか。衛生管理計画の説明はしましたか
- 4メニュー、原材料、仕入先に変更はありましたか
3つ目でつまずく店がいちばん多いところです。人が入れ替わるのは飲食店では普通のことで、入った人に計画を説明したかどうかは、記憶ではなく記録で答えられるようにしておきます。
店舗が複数あるとき
1店舗なら、この計画は午前中で書けます。9店舗になると、9通りの書き方、9通りの用紙、そして本部からはどこまで進んでいるか見えない状態になります。手間が9倍になるのではなく、揃わなくなることのほうが問題です。
同じ下書きから始めれば、店舗ごとに違うのは本当に違う部分だけになります。仕入先も冷蔵設備も清掃区域も、すでに登録されている情報から書き出せます。
